【MTG】《運命のきずな/Nexus of Fate》に対して僕らができること

皆さんこんにちは、M:tG部のヨグルティです。



スタンダード、やってますか?

アリーナ、遊んでますか?

はい、と答えた皆さんなら、このカードはご存じですよね。



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《運命のきずな/Nexus of Fate


インスタントの追加ターン、唱えるとデッキに戻るというオマケ付き。

この「インスタントである」と「デッキに戻る」という2点が重要で、先日ランプコントロールの記事でも紹介した《荒野の再生/Wilderness Reclamation》や《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》との強力な相互作用が、このカードの評価を一線級へと押し上げています。


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●きずなの基礎知識



実際のところ、このカードがどのように勝利へと繋がるのか。
ご存じない方のために、ざっくりとおさらいしておきましょう。



荒野の再生とテフェリーを使うと、最速5マナのターンには終了ステップに7マナを用意できる(荒野の再生で5マナアンタップ、2マナを浮かせた状態でテフェリーで2マナアンタップ)ので、インスタントであるきずなを終了ステップ中に唱えることができます。

迎えた追加ターンでテフェリーの+1能力を使い、荒野の再生と併せて《水没遺跡、アズカンタ/Azcanta, the Sunken Ruin》(《アズカンタの探索/Search for Azcanta》の変身後)を何回もアンタップして使いまわすことで、デッキから次のきずなを強引に探し出します。

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《水没遺跡アズカンタ/Azcanta, the Sunken Ruin》(《アズカンタの探索/Search for Azcanta》)


きずなを見つけられないターンは《根の罠/Root Snare》などの戦闘ダメージを軽減する呪文を構え、ライフやテフェリーを守って次のチャンスをうかがいます。

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《根の罠/Root Snare》


この繰り返しでゲームが進行していくと、デッキ全体は減っていくもののきずなは減らないので、アズカンタの起動回数次第で確実にきずなを掘り当てられるタイミングがやってきます。
こうなったらあとはきずなを引いて唱える、の繰り返し。無限ターンの成立です。



すでに対戦相手にターンが渡らないことが確定しており、きずなを唱え続けることでデッキ切れも起こさないので、ここからの勝ち方は星の数ほどありますが、その中でもメジャーな勝ち筋は主に2つ。



ひとつは、テフェリーの奥義を起動して相手のパーマネントを根絶やしにする作戦。

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自分がドローするたびに相手のパーマネントを1枚追放できるので、好きなだけ追加ターンを繰り返して土地の1枚すらも残さない状況にしてしまえば、対戦相手にターンを渡しても反撃を受ける心配がありません。

ここからは相手にひたすらドローゴーだけを要求し、自分はテフェリーの-3能力でテフェリー自身をデッキへ戻す→引いたテフェリーを唱えてまた戻す、の繰り返しでやはりライブラリーアウトを防げるので、相手に何もさせないままデッキ切れを待って勝つことができます。



もう一つは、何かしら1点でも通せるクロックを用意すること。

《解任+開展/Depose+Deploy》や《大判事、ドビン/Dovin, Grand Arbiter》などで出てくる飛行機械トークン1体でもいいので、相手にブロックされずに攻撃したり、あるいは毎ターンライフを1点でも奪えるような置物さえあれば、そのダメージを無限に積み上げて勝つことができます。

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《解任+開展/Depose+Deploy》

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《大判事、ドビン/Dovin, Grand Arbiter》


テフェリーを使ったライブラリーアウトに比べると、直感的かつスムーズに勝利することができる反面、コンボパーツ以外での勝ち筋を用意するため構築に若干の影響を及ぼします。



具体的な対策は以下の二つ。



ひとつは、きずなを追放してしまうこと。

さすがに7マナの呪文なので、普通に打ち消すだけでもある程度テンポ面で優位に立つことはできますが、この呪文はどの領域から墓地に落ちてもデッキに戻ってしまうので、フィニッシュに手間取っているとデッキからの再利用を図られかねません。

逆に、きずなを使うデッキの大半はきずなを重要な勝ち手段として頼っているため、これを根こそぎぶっこ抜かれるとプランが大幅に狂います。

候補としては、《漂流自我/Unmoored Ego》や《中略/Syncopate》あたりが実用圏内でしょう。

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《漂流自我/Unmoored Ego》

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《中略/Syncopate》


漂流自我はきずな4枚をすべて一網打尽にでき、手札もしっかり検閲するという「〇〇絶対許さないマン」の代表格。
ただしメインに入れられるような代物ではなく、サイド後に投入されることになるカードですから、きずなを全抜きして《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》などに入れ替えるアグレッシブ・サイドボードにはご注意を。

中略はただのカウンター呪文なので、これ一枚できずなを根絶できるわけではありませんが、相手のデッキ内のきずな比率を下げることはそれだけでも大きく時間を稼ぐ結果になります。
もちろん他のカードを打ち消すのに使ってもよく、環境には《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》や再活呪文など墓地での役割を持つカードが他にもあるので、いわゆる「丸い」選択肢としてコントロールなどに好まれることになると思われます。

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《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix




もうひとつは、きずなに勝てるコンセプトのデッキを使うこと。

なんだか身も蓋もない話だと思われそうですが、メタゲームを回すというのはそういうことです。

ターボネクサスに代表されるきずなデッキは、基本的にコンボデッキとしての側面がとても強いです。
そのため、同速かそれ以上に遅い相手であるミッドレンジ、ランプには極めて強いですが、コンボ前にゲームが決まってしまいかねないアグロや、逆にこちらの一挙手一投足を逐一咎めてくるコントロールには弱いです。

直近のいくつかの大型大会の結果を見ると、今の環境は「アグロ」「ミッドレンジ」「コントロール」「ネクサス」と多種多様なデッキがそれぞれに結果を残しています。まさに群雄割拠。
しかしそんなバリエーションの時代においても、きずなと同じくらいこれ抜きでは現スタンダードは語れない、というカードがあります。


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《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》


ドローはコントロールに、回復はアグロに効き、ミッドレンジ相手ならその両方が有効で、しかもチャンプブロッカーからフィニッシャーまで務めるという、押しも押されもせぬスタンダードの大立者、《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》。
現環境ではこれを積めるかどうか、積めないなら食い下がれるかどうかが構築の分かれ目と言ってもよく、それはひとえにこのカードを1枚で対処できる呪文が存在しないからです。

推察するに、今の環境は「ネクサスにコンボをさせないアグロ・コントロール」「アグロにもコントロールにもハイドロイドでゴリ押せるミッドレンジ」「ミッドレンジのアドバンテージ力を無視できるネクサス」の形で回っているものと思われます。
なのできずな許すまじ、と思念を燃やす人はアグロ系かコントロール系を使うのがいいでしょう。

個人的には、きずなとハイドロイドの両方に有利なデッキができたなら、それが今環境の最適解だと考えています。漂流自我で全部抜き取るとか……いや、それは有利とは言わないですかね()



●実践編



さあ、仮想敵の設定と対策は済みました。
プラン通りのゲームができれば、おおむねネクサスに負けることはないでしょう。

と、そこまで練り込んでいても、蓋を開けたらどうなるかわからないのがカードゲーム。
思うようにカードが引けず、あれよあれよという間にゲームは終盤へもつれ込み、相手のきずな連打が止まらなくなってしまいました。

ここであなたが一番考えなければならないのは?



そう、相手の無限ターンがどこを目指しているのか、です。



ループを許してしまった時点で、おそらくあなたにはもう有効な抵抗手段は残されていないでしょう。
今やゲームの決定権はすべて対戦相手にあり、どんなに惨たらしい拷問生活が待っていたとしても、あなたにはそれを回避することはできません。

……いえ、たった一つだけ回避する方法があります。



投了です。



投了はすべてのプレイヤーに認められた権利であり、宣言すれば即座にそのゲームを終わらせることができます。
わざわざ自分から負けを認めるのは癪だ、もしかしたらどこかで相手がミスするかもしれないから最後まで待つ、という方もいるかもしれませんが、大会などにおいてはこの権利は大きな役割を持っているのです。

大会には一試合あたり50分の制限時間があり、すべてのプレイヤーはその制限時間内でマッチを終える義務を負っています。
しかし実際には盤面が込み入ったり、カード同士の複雑な相互関係で頭を悩ませたりしていると、50分では決着が着かない場合も。
通常は2勝-0敗、もしくは2-1での決着となるマッチですが、こうした特殊な状況下だと1-1-1引き分け、ひどい場合は1-0-1(二戦目の途中で制限時間になるパターン)なんてこともあり得ます。
もう一戦、最後の一戦を決着までプレイできていれば、もしかしたら勝てていたかもしれないのに……なんて経験、おありの方もいるかもしれませんね。

そうした状況を回避するために、今の負けそうなゲームに見切りをつけて次の勝負で勝てるだけの時間を残す、という意味での投了の判断が必要になってきます。



さて、あなたは運の悪いことに1戦目からいきなりきずなループを決められてしまいました。
これはさっさとサレンダーしてしまうのがいいでしょう。相手がクリーチャーを出して攻撃してきているような状況ならまだマシですが、最悪テフェリーでのライブラリーアウト待ちとなると、途方もない時間がかかってしまいます。
反撃の芽を残すためにも、制限時間は有効に使うべきです。

ではこれが2戦目だったら?
1戦目であなたが勝っているなら、多くの場合は待って大丈夫です。
相手はすでに1本のビハインドを追っていて、ここからマッチを勝つためには今の試合と次の試合の二つを勝たなければなりません。
1戦目にどれだけの時間を費やしているかはわかりませんが、ネクサスは基本的に時間がかかるデッキ。3本フルセットで戦いぬくためには、なるべく速くプレイする必要があります。
おそらく最速で決着を目指してくるはずなので、ヒマだと言わずに待ちましょう。

ただし、相手があんまり長くループばかりしているようだったら、ジャッジを呼んで「相手のデッキに勝つ手段が残されているか確認してもらう」というのも手です。
まずないとは思いますが、「2-0で負けるより1-0-1の方がポイント的にマシ」とか「今の自分には勝ち筋がないけど、もしかしたら相手が何かミスをして自爆したり、あるいは根負けしてサレンダーしてくれるかもしれない」とか、そういうことを考えてループを続けている可能性もあります。
おかしいと感じたらさっさとジャッジを呼ぶのがいいでしょう。

一応。あなたが1戦目を落とした状態で、2戦目もループに入られたら。
今度はさほど待ちません。そこまでの試合経過にもよりますが、ちょっと様子を見たらジャッジに勝ち手段の有無を確認してもらって、さっさと投了してしまいましょう。
特に「グランプリ二日目を狙う」などのポイント差がさほど大きく響かない状況では、粘りに粘って引き分けに持ち込み1点取るよりも、しっかり休息を取るなどして長丁場を戦うためのメンタリティを保つ(要するに他でしっかり3点を取る)方が、よほど結果に差が生まれます。



まとめると、皆さんが今後ネクサスと戦う際に意識していただきたいのは、

1, きずなを使う側は自分の勝つ時間・負ける時間をある程度自由に決められる

2, 使われる側は抵抗できないからと眺めるのではなく、マッチという大局を見越して進退を見極める

以上の2点です。





●終わりに



ここまでお読みいただいてありがとうございました。

最近はきずなに関する悪いイメージの流布が激しく、「きずな禁止しろ」という声がそこここで聞かれますが、少なくともトーナメントシーンにおいてネクサスが他を寄せ付けないほどの猛威を振るっているというわけではありません。
対策すれば多くのデッキで十分に勝ち目があり、こうした強力なコンボデッキはメタの一角として存在する分にはむしろ健全な部類だ、とすら個人的には思っています。

ただ、追加ターンは「相手に何もさせない力」であり、人の心の悪い部分を露骨に反映できてしまう力でもあります。
そう―――










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「心の真の姿とは―――闇だ」









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「闇じゃない!」

「心は弱いかもしれない   闇に負ける時だってある」

「でも―――闇の奥には、光があるんだ!」







というわけで、キングダムハーツやりましょう。

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それでは。